レジストリー研究の成果 ③

私たちは、COQ2という遺伝子の中で観察されるV393Aという遺伝子上の変異が、多系統萎縮症を発症しやすくするリスク因子(持っていても発症するわけではないが、持っていない人と比べると発症しやすい)の一つであることを以前に報告しました。

このV393Aは、欧米ではほとんど観察されず、日本を含め、中国や韓国など東アジアでは一定の頻度で観察されます。果たしてV393Aが本当に多系統萎縮症のリスク因子と言えるのか、様々な研究グループが追試を行いました。

今回、私たちは、レジストリーでご提供いただいたDNAを新たに解析しました。さらに他の研究グループの追試の結果と統合する解析(メタ解析といいます)を行い、その結果、V393Aが多系統萎縮症のリスク因子であることが改めて確認されました。

この研究は、東京大学Kristine Joyce Portoが筆頭著者として、Journal of the Neurological Sciences誌に掲載されました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022510X21003178

なお、V393Aを持っている患者さんと、持っていない患者さんとでは、発症年齢や症状、病気の進む速さなどについて、明らかな違いは見つけられませんでした。また、V393Aを持っている人のほとんどは、多系統萎縮症を発症しませんので、ご家族に影響することは原則としてないと考えています。このような研究は、多数の患者さんと病気でない人の解析結果を集めて分析するものであり、個々の患者さんの変異の有無については、臨床上の有益性が乏しいため、レジストリーに参加いただいた方各々には、原則として結果をお伝えしていません。

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